5/16 短編まとめ 

※脈絡ないSSまとめです。iPadで入力したままなので、段落頭の空白などは入っていません。
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『隠蔽』

学校から帰る途中、廃品置き場のゴミ箱を覗き込んだことがある。丸いゴミ箱の底には、円を描くようにして、三匹の猫の死体が敷かれていた。
僕は嬉しくなって、並んで棄てられた冷蔵庫の方も覗いてみたけれど、そこには何も入っていなかった。だから、僕が入ることにした。

……

『魔王討伐記〜序〜』

ごうごうと、耳元で風がうなる。鼓膜のすぐそばで、嵐でも起きているのかも。そんなこと、あるわけないけどね。
学校の屋上に仁王立ちしたあたし、すぐそこのビル群に向かって叫ぶの巻。山びこっていうんだろうか。あんな硬い外壁に音がぶつかったら、くわあんと響いて、耳鳴りのような音になって返ってきそうなものだけど、案外そうでもない。うんともすんとも言わない平たい外壁は、あたしの叫びに降参したみたいに見える。腰に手を当ててドヤ顔のあたし、大勝利。
この遊びを始めたのは、いつだったかな、たしか、半年くらい前だと思う。最初は悲鳴のつもりだった。でも、ビルの群れは、ちっともあたしに抵抗しないの。なんか気持ちよくなっちゃって、今じゃほとんど毎日やってる。大きな魔物たちを一声で支配するとか、王様みたいじゃない?どっちかって言うと、魔王って感じ?ひとりぼっちの魔王様、でもすっごく強いからいいの。
もう一度、ビルに向かって叫ぶ。あたしに屈服した世界、お元気?叫んだ後は妙にしんと静かで、余韻がちょっとだけ寂しい。
壁みたいなビルの群れは正面突破なんて無理そうで、黙ってみたら、怖くなってくる。本当は、あたしの方が負けてるの?立ち向かうことなんてできないの?

ぼうっとしてたら、後ろで、誰かが叫ぶのが聞こえた。何かと思って振り返ってみたら、あたしとおんなじ仁王立ちで、へらへら笑ってる女子がいた。なんかこの子、どっかで見たことある気がする。どっかで会ったっけ?って聞いたら、クラス一緒だよって返ってきた。知らないし。誰だよ、あんた。
シカトしてもう一回叫んでみたら、またその子が山びこになった。ムカついて睨んでみても効果ナシ。邪魔ったらない。
その子は、ちょっと首をかしげて、にっこり笑った。

「私、ゆう。勇って書くの。女なのに変でしょ」

別に、変じゃないんじゃない。どうでもいいし。って答えたら、まずかったみたい。その子、あたしの隣に駆けてきて、ビルに向けて叫んだ。あたしみたいに。ちょっとだけ、へっぴり腰だったけど。

「気持ちいいね」

その子、勇、だっけ。勇は、笑うとひまわりみたいだった。花なんてあんまり好きじゃないけど、勇の笑顔は違ってた。勝手に手を握られてびっくりしちゃったけど、勇の手が柔らかかったから、このままでもいっか、なんて思った。
これが、寂しがり魔王とへなちょこ勇者の出会いの話。

……

『ピリオド殺害事件』

私の手の甲には、中学生のころ好きだった女の子にシャーペンで突き刺された傷があります。
昔の私は、親分気質というんでしょうか、子分を引き連れて歩くのがとにかく好きでした。よく人を殴ったし、大怪我をさせたこともあります。欲しいものは何でも手に入ると思い込んでいました。
そんな子供ですから、女の子に惚れた時も、殴れば手に入ると思ったんでしょう。子分を使って、その子をいじめるようになりました。
彼女はとてもおとなしい子で、他の女子ともあまり交流を持つことなく、ひっそりと教室に紛れていました。ある時、そんな彼女に目を向けて欲しかったのか、私は、本を読んでいる彼女の机を蹴倒しました。そして、私の暴力に慣れきって、文句の一つも言わずに立ち上がろうとする彼女に襲いかかり、無理やり服を脱がせたのです。昼休みのことですから、当然教室にも人が残っていました。
先生がどうにか私を引き剥がしたときには、すでに彼女は裸同然でした。胸はすっかり見えてしまっていたと思います。彼女がどんな顔をしていたかは確かめられませんでした。それがとても残念だったことは、今でもよく思い出せます。それから数日、彼女は学校に来ませんでした。周囲は、もう二度と登校して来ないんじゃないかと噂していました。
けれども、彼女はやってきました。私に襲われてから、一週間ほどたったころでした。久しぶりに見た彼女に、やつれた様子はありませんでした。教室にも入ってきた彼女は、自分の席ではなく、私の机の方にやってきました。私は彼女を無視して、子分たちとおしゃべりを続けました。
正直に言えば、彼女の姿を見つけたとき、しめたと思いました。今度はレイプしてやろうというつもりでいたからです。朝の教室に、先生はいません。
そんな私の目論見に気づくことなく、彼女は私の机の前に立ちました。そして、自らのポケットに手を入れます。そのときになって、私は彼女がカバンを持っていないことに気がつきました。けれども、異常に気づくには遅すぎました。呆然としている私や観衆を前に、彼女は、ポケットから引き抜いたシャーペンを振り下ろしていたのです。シャーペンは、十代の少女のものとは思えない力で私の手の甲に突き刺さりました。
その後のことは、あまりよく思い出せません。学校に呼び出された母がわあわあ騒いでいたことと、彼女の母親が何度も頭を下げていたこと、それから、血まみれのシャーペンを握った彼女がこぼした言葉だけは、やけに鮮明に覚えているのですが。
死んだ、死んだ。あのとき彼女は、確かにそう言いました。もちろん、こうして語っている私は生きています。傷こそ残りましたが、幸いにも、障害は残りませんでした。ですから、いたって健康です。なのに彼女は、どうしてあんなことを言ったんでしょう。今でもそれは謎のままです。
おかしなことかもしれませんが、本音を言えば、今でも私は彼女のことが好きです。あの一件で、彼女を嫌いになるどころか、むしろ、あれを境に私の気持ちはヒートアップし、手がつけられなくなってしまったのです。
死んだ、死んだ。あのとき死んでしまった何かと引き換えに、私の初恋は終わりを見失ってしまったのかもしれません。

……

『姫』

中学の修学旅行ん時の話だけどさ。あたしと恭子と真希とだったら奇数になっちゃうからって、数合わせで部屋一緒になった奴のこと覚えてる?……そうそう、ぶりっ子の姫。山本姫香。
二日目の夜、お前ら二人でコンビニ行ったじゃん。あたしだけ、眠いからいいやーって言った時。あの時、姫も部屋に残っててさ。あいつ、友達いないし。あたしとも仲良くないじゃん?だから、あたしはスマホいじってて、あいつはバカみたいにテレビのチャンネル切り替えてた。
そういえばあいつ、エンコーしてんじゃないかってハブられてたのわかる?あー、真希は天然だもんね、分かんないよね。あたし、あんたのそういうとこ好き。恭子はわかるっしょ?アキたちと仲良かったんだし。アキ、姫のこと大っ嫌いだったよね。あのクラスでアキに嫌われたら終わりって皆わかってたのに、アキの彼氏に手出すとか。バカじゃないのって感じ。アキもアキで、机に落書きとか、靴に画びょうとか。顔ぶん殴った時は、さすがにちょっとやり過ぎじゃん?って思ったけど。あ、アキが仲良い男友達に姫マワさせたって聞いたけど、あれってマジ?……うわ、そうなんだ。姫、よくなんともない顔して教室来れたよね。ニブってんじゃないの?ショーガイ?あははは!たしかにあいつ、すげえどんくさいしね。絶対そうだと思う。恭子、今日冴えてんね。
あ、そうそう。修学旅行の話だっけ。あたしと姫で部屋にいたんだけど、べつに一緒になんかしてるわけじゃなかった。正直関わりたくなかったし。なんだけど、あいつ、静かなのが気まずかったみたいで、する?とか言い出してさ。は?って思わない?キモいじゃん。ありえねーっつったら、不思議そうな顔して。あたしをエロオヤジと勘違いしてんなよ、ビッチ!……あはは、言ってない言ってない。カワイソーじゃん。本当のことだし。あたし、結構優しいからさ。……もう、恭子ってば!えげつねーとか言わんでったら!あははは!
で、あたし女だし、お金ないよって言ってやった。そしたら、明美ちゃんだったらタダでいいよとか言い出して。意味わかんないじゃん?なんでって聞いたら、ひめ、明美ちゃんのことがね、好きなの、とか言われて……あのさ、お前ら超笑ってっけど、今の声真似めっちゃ似てんだから!ホントホント!明美ちゃんのことがね、ね……みたいな!
ビッチでレズとかヤバくない?超キモいじゃん。しかもあたしのこと好きとか……思い出しただけでサブイボ。ありえねー。
でもさ、そこであたし、思いついたんだ。こいつ、アキに目つけられてるし、なんかに使えんじゃないかなーって。そんで、これチャンスかもとか思って、うんって言ったら、あいつ、服脱ぎ始めてさ。キスする感じの空気にして、目閉じてって言って、あいつが目閉じてる間に、無音カメラでアソコ撮ってやった。超ワルじゃん?はは、いいっていいって。だってあいつキモいし、どーせ誰にでも股開くんだから。
修学旅行終わってから、あたし、アキと仲良かったじゃん。あれ、実は姫の写真送ってやったからなんだよね。おかげで、中学卒業するまで、あたしは超平和。セーカク悪いみたいだけど、ホントキモかったんだもん!無理無理。え?あいつ?キモかったけど、あれ以来なんも言ってこなかったよ。諦めたんじゃない?もう関わりたくもないから、別にいいけど。
あれ、お前らもう帰んの?えー、もうちょっとしゃべってこうよ。家帰りたくないし。もうちょっとだけ!ね?ホントに帰りたくないの。なんで?なんでって……えっと、あたし、最近よく家にいたずらされんだよね。ドア叩かれたりとか。でも、外には誰もいないの。ピンポンダッシュとかもされるし。超迷惑でさー。
さっきの話にちょっと戻るけど、姫、今何やってるか知ってたりしない?あはは、好奇心よ、好奇心。からかった相手がどうなったか気になんじゃん。まだ体売ってんのかなあ。ぶりっ子のままだったら超ウケるんだけど。
……え?何?自殺?…………嘘でしょ?
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category: 小話/作品について

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